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日本の武士は歯を黒く染めていた?
こんにちは。下目黒・目黒駅エリアの歯科・歯医者の【ルートデンタルクリニック】です。

かつての日本では、歯を黒く染める「お歯黒(おはぐろ)」という風習が広く行われていました。特に戦国時代から江戸時代にかけては、貴族や武士、既婚女性の間で一般的な文化でした。
お歯黒には、鉄と酢などを反応させた液体(鉄漿:かね)を用い、歯の表面に黒い光沢のある被膜を作ります。現代人から見ると奇異に思えるかもしれませんが、当時は「美しさ」や「成熟」「身分」を象徴するものとされていました。
武士階級では、男子が元服(成人の儀式)を迎える際や、結婚後にお歯黒を施すことがありました。また女性の場合は、既婚の証としての意味合いも強く、家庭に入ったことや夫への忠誠を表すしるしとされていました。
興味深いのは、こうした文化が単なる審美的なものにとどまらず、虫歯予防の効果もあったとされている点です。鉄とタンニンの化学反応によってできた被膜が、歯を酸から守る働きをしていたと考えられています。
明治時代以降、西洋化の流れの中で「白い歯が美しい」とされるようになり、お歯黒の文化は急速に廃れていきましたが、日本の歴史と美意識を知るうえで、非常にユニークな習慣だったといえるでしょう。
参考文献
- 中村裕一『お歯黒の文化史』(雄山閣, 1997年)
- 京都国立博物館「お歯黒」文化紹介資料
- Dental Anthropology Journal (2003) “Iron-based blackening of teeth and its cariostatic potential”
- 国立歴史民俗博物館「日本人の身体文化と風習」
